トレンドやニュース批評

NHK受信料強制徴収は、認められるのか?判決全文を自分なりに読み解いてみた。

この記事は約17分で読めます

NHKの受信料強制徴収に反対し、受信料未納を貫いていた人とNHKの裁判に判決が出ました。

今回のポイントは

NHKによる受信料強制徴収は認められるのか?という点です。

今でもこの受信料徴収については疑問の残る制度ですよね。

そもそも、この法律が決まった時はテレビ自体が高級品であり、受信料をテレビ保有者から徴収する意義もありました。

そのあたりも踏まえて、今回の受信料未払い裁判の結果を見ていきましょう

 




判決の全文と、私が気になった詳細部分説明!

判決の全文を載せても、中々読めないと思うので判決全文のPDFへのリンクを置いておきます。

NHK受信契約についての最高裁判決全文

その中から、個人的に気になった部分を抜粋して紹介しますね。

 

裁判所判例情報より

最初に、判決の概要を載せておきます。

 

1 放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,その者に対して承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が成立する

2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない

3 受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する

4 受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効は,受信契約成立時から進行する

 

この判決について、Twitterで自分はこんな思い付きをつぶやいたんですが・・・

 

残念ながら、このNHK受信料については国会承認を経て制定されるもののようなので、異論はなさそうです。

↓受信料について
NHK受信契約についての最高裁判決全文より

原告(NHK)は,「日本放送協会放送受信規約」(以下「放送受信規約」という。) を策定し(放送法29条1項1号ヌにより,受信契約の条項は,経営委員会の議決 事項とされている。),同法64条3項に従いあらかじめ総務大臣の認可を受けて,これを受信契約の条項として用いている。

放送受信規約には,次の内容の条項が含まれている(放送受信規約は,受信契約 の種別,受信料額及びその支払方法の変更等による改定が重ねられており,本件に 関わる時期において改定されているものについては,時期を区別して記載す る。)。

(ア) 受信契約の種別(第1条)

① 平成17年4月1日から平成19年9月30日まで 受信設備のうち,衛星系によるテレビジョン放送を受信することのできるカラー テレビジョン受信設備を設置した者は,衛星カラー契約(衛星系及び地上系によるテレビジョン放送のカラー受信を含む受信契約)を締結しなければならない。

② 平成19年10月1日以降 受信設備のうち,衛星系によるテレビジョン放送を受信することのできるテレビ ジョン受信設備を設置した者は,衛星契約(衛星系及び地上系によるテレビジョン 放送の受信についての受信契約)を締結しなければならない。

(イ) 受信料支払の義務(第5条) 受信契約者は,受信設備の設置の月から,1の受信契約につき,次の額の受信料 (消費税及び地方消費税を含む。)を支払わなければならない。

① 平成17年4月1日から平成19年9月30日まで 衛星カラー契約については,訪問集金(口座振替等以外の方法による支払)では 月額2340円。

② 平成19年10月1日から平成20年9月30日まで 衛星契約については,訪問集金では月額2340円。

③ 平成20年10月1日から平成24年9月30日まで 衛星契約については,月額2290円。

④ 平成24年10月1日以降 衛星契約については,継続振込その他の方法による支払(口座振替又はクレジッ トカード等継続払を除く。)では月額2220円。

(ウ) 受信料の支払方法(第6条) 受信料の支払は,次の各期に,当該期分を一括して行わなければならない。

第1期 4月及び5月

第2期 6月及び7月

第3期 8月及び9月

第4期 10月及び11月

第5期 12月及び1月

第6期 2月及び3月

原告(NHK)の要求について。実際に通常契約していたときと比べて4倍の料金を請求される!?

NHKの請求について、こちらに全文を載せておきます。

NHK受信契約についての最高裁判決全文より

原告(NHK)の被告に対する請求は4つ。

①主位的請求として,放送法64条1項により,原告による受信契約の申込みが被告に到達した時点で受信契約が成立したと主張して,受信設備設置の月の翌月である平成18年4月分から平成26年1月分までの受信料合計21万5640円の支払を求め,

②予備的請求1として,被告は同項に基づき受信契約の締結義務を負うのにその履行を遅滞していると主張して,債務不履行に基づく損害賠償として上記同額の支払を求め,

③予備的請求2として,被告は同項に基づき原告からの受信契約の申込みを承諾する義務があると主張して,当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料として上記同額の支払を求め,

④予備的請求3として,被告は受信契約を締結しないことにより,法律上の原因なく原告の損失により受信料相当額を利得していると主張して,不当利得返還請求として上記同額の支払を求めるものである。

[char no=3 char=”悪魔くん”]ウケケ・・・今までの損失+他もろもろ4倍の料金請求するぜ![/char]

 

被告側の主張はこちら。

被告は,放送法64条1項は,訓示規定であって,受信設備設置者に原告との受信契約の締結を強制する規定ではないと主張し,仮に同項が受信設備設置者に原告との受信契約の締結を強制する規定であるとすれば,受信設備設置者の契約の自由,知る権利,財産権等を侵害し,憲法13条,21条,29条等に違反すると主張するほか,受信契約により発生する受信料債権の範囲を争うとともに,その一部につき時効消滅を主張して争っている。

放送法64条1項は契約の自由などに対して違憲!それに、受信契約による支払い義務もそこまでないやろ!

これに対して、それぞれの件での判決結果をみてみましょう。

NHK受信契約についての最高裁判決全文




上記①主意的請求について。被告側の主張は・・・

論旨は,被告に対して受信契約の承諾の意思表示を命ずる判決が確定することにより受信契約が成立した場合に発生する受信料債権は,当該契約の成立時以降の分であり,受信設備の設置の月以降の分ではない旨をいうものである。

[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”man1.jpg” name=”とある君”]強制的に契約させられたとしても、受信設備の設置時点にさかのぼって支払いはしないよ![/speech_bubble]

これに対して、判決結果は!!

上記条項を含む受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するというべきである。

まず1勝!受信設置の月以降の分の受信料を遡って請求できるぜ!

 

上記②について。(受信契約の締結義務を負うのにその履行を遅滞していると主張して,債務不履行に基づく損害賠償として上記同額の支払)

放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。

原告は,受信設備設置者が放送法64条1項に基づく受信契約の締結義務を受信設備設置後速やかに履行しないことは履行遅滞に当たるから,原告は受信設備設置者に対し受信料相当額の損害賠償を求めることができる旨を主張するが(予備的請求1に係る主張),後記のとおり,原告が策定し受信契約の内容としている放送受信規約によって受信契約の成立により受信設備の設置の月からの受信料債権が発生すると認められるのであるから,受信設備設置者が受信契約の締結を遅滞することにより原告に受信料相当額の損害が発生するとはいえない。

また,放送法が受信契約の締結によって受信料の支払義務を発生させることとした以上,原告が受信設備設置者との間で受信契約を締結することを要しないで受信料を徴収することができるのに等しい結果となることを認めることは相当でない。

ちっ!さすがに慰謝料は無理か・・・。
ふう、とりあえず2倍にはならんかな?

 

 




上記③について。(当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料として上記同額の支払)

原告は,受信設備設置者が放送法64条1項に基づく受信契約の締結義務を受信設備設置後速やかに履行しないことは履行遅滞に当たるから,原告は受信設備設置者に対し受信料相当額の損害賠償を求めることができる旨を主張するが(予備的請求1に係る主張),

後記のとおり,原告が策定し受信契約の内容としている放送受信規約によって受信契約の成立により受信設備の設置の月からの受信料債権が発生すると認められるのであるから,

受信設備設置者が受信契約の締結を遅滞することにより原告に受信料相当額の損害が発生するとはいえない。

また,放送法が受信契約の締結によって受信料の支払義務を発生させることとした以上,原告が受信設備設置者との間で受信契約を締結することを要しないで受信料を徴収することができるのに等しい結果となることを認めることは相当でない。

ぐぬぬ・・・・こっちもあかんか??ただ、承諾の意思表示についてはさすがにゲットだ!
な・・・なんとかこっちも回避。

 

 

上記④に対して(法律上の原因なく原告の損失により受信料相当額を利得していると主張して,不当利得返還請求として上記同額の支払を求める)

こちらの件について、よく確認したのですが今回の判決文には出てきていません。

 

ただ、要旨としては上記③と同じように棄却されたものと思われます。




裁判結果のまとめ。

1 放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,その者に対して承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって受信契約が成立する

2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない

3 受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する

4 受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効は,受信契約成立時から進行する

受信契約拒否する人には、裁判を持って強制的に契約することができますよ
裁判結果により締結した場合、設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生しますよ
上記契約の場合は、「消滅時効」というのはないですよ。そもそも、契約してないので。
今回問題になった、未納の受信料だけは、過去にさかのぼって支払いしてくださいね。

 

結構きつい内容の判決になってしまいましたねえ・・・・。

 

裁判結果に基づいて、未契約者ができること。

①「設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生」って部分を逆手に取って、「今月から設置した!」って押し通す。また、その際はその旨を契約書なりに残しておく。(別の担当が遡って請求してくるかもしれないから)

②放送法の条文に、こんな項目があります。

放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

これを見る限り、多重放送に限り受信することのできる設備であれば問題ないようですね。ただし、基本的にはテレビの線は必ず部屋にあるでしょうし仮に「テレビを置いているだけで、受信していない」としたところでどうしようもないでしょう。

また、テレビの線があってもアンテナが壊れていたら受信することはできませんよね?

・・・つまり、そういう回答もできる。とはいってもそれも調べられたらおしまいですけど。

 

あと、変わった対処法とすればこちらのブログに書かれているように

参考:NHK その対処、本当に正しいの?

そもそも論として、テレビを設置しただけでは契約義務などないし電波法や受信という概念を突き詰めればNHKが観たくて観ている人以外は契約の義務はないと言えます。本来放送法第64条はNHK受信機器を管理監督者の管理下において操作、受信を行うという前提のもとに作成されているので、放送の受信を目的としない受信設備~この限りではないという抜粋をせずともこの64条自体、本来はNHK受信目的者以外に該当するものではありません。総務省でもそういう解釈ですよね。ここらへんは僕も随分前に調べまくってかなり勉強しました。

放送法で定められた義務、という大義名分があるから強気にドアを叩き横柄な態度で契約を迫る。
大義名分があるからその中身や解釈、裁判所の判決まで勉強しない。
大義名分があるから「商取引のセールスである」という本質が見えていない。
これは国民側も同じことです。
放送法で定められた「この限りではない」に与する条文をドヤ顔でむやみに振りかざす。本質が全く見えていない。訴えられたら現状負けるよ?
テレビを置いてるなら四の五の言わずに払うべき。ただし相手が身元と訪問の正当性を証明し契約の義務を理解、納得できてから。
テレビ置いてないなら堂々と部屋の中を見せればいい。ただし相手が身元と訪問の正当性を証明してから。
特に女性一人で対応する場合は、必ず女性営業員を部屋に上げるようにしましょう。女性営業員がその場にいなければ女性営業員が来れる日に改めてもらうか、もしくは男性知人なりが一緒に立ち会える日を指定しましょう。
法律がある以上は「その商品興味ないからいらないです」とは言えなけど、逆に言えば「契約しないとは言っていない状態」なら問題ないのです。
理解、納得できれば契約します。放送法で定められた義務ですから。
お客様に理解、納得してもらうために誠心誠意対応するならこちらも誠実に対応しましょう。理解納得できれば契約しましょう。
それを向こうがめんどくさがるなら来なくなるだけでしょう。こちらが断ったわけではないから仕方ない。
「では結構です」と言われたまま放っておかれているので保留。
僕は今この状態です。
結構長々と引用させていただきましたが、要はずっと「契約について相談している状態」を保持する、ということ。
まあ、それでも裁判起こされたら負けると思いますが「契約しないとはいっていない、契約に納得がいかないからまた来てね」という状態であれば、相手もそこまで強硬手段には出ないでしょう。
もしかしたら、これが一番正当な拒否方法かもしれませんね。
どの手法にしても、担当者が変われば対処も変わるので、柔軟に対処するしかありませんね。



今回の判決を決断した最高裁・裁判官一覧と、唯一の良心である反対意見を出した裁判官の紹介。

裁判長裁判官 寺田逸郎

裁判官 岡部喜代子

裁判官 小貫芳信

裁判官 鬼丸かおる

裁判官 山本庸幸

裁判官 山崎敏充

裁判官 池上政幸

裁判官 大谷直人

裁判官 小池 裕

裁判官 木澤克之

裁判官 菅野博之

裁判官 山口 厚

裁判官 戸倉三郎

裁判官 林 景一

 

唯一の反対意見を出した裁判官

裁判官 木内道祥

全文はこちらに転載してアコーディオンで隠しておきます。
私は,放送法64条1項が定める契約締結義務については,多数意見と異なり,意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。以下,その理由を述べる。

反対意見全文
1 意思表示を命ずる判決をなしうる要件[br num=”1″](1) 意思表示の内容の特定 判決によって意思表示をすべきことを債務者に命ずるには,その意思表示の内容 が特定されていることを要する。[br num=”1″]契約の承諾を命ずる判決が確定すると,承諾の意 思表示がなされたものとみなされて契約が成立することになるが,1回の履行で終 わらない継続的な契約においては,承諾を命じられた債務者は判決によってその契 約関係に入っていくのであるから,承諾によって成立する契約の内容が特定してい ないまま,判決が債務者の意思表示の代行をなしうるものではない。[br num=”1″](2) 意思表示の効力発生時期 判決が命じた意思表示の効力発生時期が判決の確定時であることは,民事執行法 174条が定めており,これと異なる効力発生時期を意思表示を命ずる判決に求め ることはできない。[br num=”1″]2 放送受信規約の定める受信契約の内容 放送法は受信契約の内容を定めておらず,原告の定める放送受信規約がその内容 を定めている。[br num=”1″]そのことの当否は別として,放送受信規約の定める受信契約の内容 は,次のようなものである。[br num=”1″](1) 受信契約の種別と受信料(第1条第1項,第5条) 受信契約には,3つの種別があり,1の受信契約につき,その種別ごとの受信料 が定められている。[br num=”1″](2) 受信契約の単位(第2条) 受信設備が設置されるのが住居であれば,世帯が契約単位であり,1世帯で複数 住居なら,住居ごとが単位となる。世帯とは,住居および生計をともにする者の集 まり,または,独立して住居もしくは生計を維持する単身者である。 事務所等の住居以外の場所に設置される受信設備については,設置場所が契約単 位であり,設置場所の単位は,部屋,自動車などである。[br num=”1″]同一世帯の1の住居に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1であり, 住居以外の場所では1の設置場所に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も 1である。[br num=”1″](3) 受信契約書の提出義務(第3条) 受信設備を設置した者は,遅滞なく,①設置者の氏名及び住所,②設置の日,③ 受信契約の種別,④受信できる放送の種類及び受信設備の数などを記載した受信契 約書を原告に提出しなければならない。[br num=”1″](4) 受信契約の成立(第4条第1項) 受信契約は受信設備の設置の日に成立するものとする。[br num=”1″](5) 受信契約の種別の変更(第4条第2項) 受信契約の種別の変更については,受信設備の設置による変更は設置の日に,受 信設備の廃止による変更は,その旨を記載した受信契約書の提出の日に,原告の確 認を条件として,変更される。[br num=”1″](6) 受信料支払義務の始期と終期(第5条第1項) 受信契約者は,受信設備の設置の月から解約となった月の前月まで,受信料を支 払わなければならない。[br num=”1″](7) 受信契約の解約(第9条第1項,第2項) 受信設備を廃止すると,受信契約者は,その旨の届出をしなければならない。原 告が廃止を確認できると,届出があった日に解約されたものとする。[br num=”1″]3 放送受信規約の定めと意思表示を命ずる判決をなしうる要件の関係[br num=”1″](1) 放送受信規約による契約内容の特定 受信契約の承諾を命ずる判決には,承諾の対象となる契約の内容の特定が必要な ところ,判決主文において明示するか否かを問わず,判決の時点における放送受信 規約を内容とする受信契約の承諾を命ずることになる。そこで,放送受信規約の定 めが,それ自体として,契約内容を特定するものとなっているのか否かが問題となる。[br num=”1″](2) 放送受信規約による契約内容 放送受信規約は,受信設備設置者が設置後遅滞なく前記2(3)の事項が記載され た受信契約書を提出して受信契約が成立することを前提としている。そのようにし て受信契約が締結される限り,受信契約が受信設備設置時に遡って成立すると合意 することは可能であり,1世帯に複数の受信設備があり,受信設備の種類が異なっ ていても,提出された受信契約書の記載によって,契約主体,契約の種別を特定す ることは可能である。[br num=”1″]他方,以下の①~③で示されるとおり,判決によって受信契約を成立させようと しても,契約成立時点を受信設備設置時に遡及させること,また,判決が承諾を命 ずるのに必要とされる契約内容(契約主体,契約の種別等)の特定を行うことはで きず,受信設備を廃止した受信設備設置者に適切な対応をすることも不可能であ る。[br num=”1″]① 契約の成立時点と受信料支払義務の始点 意思表示を命ずる判決によって意思表示が効力を生ずるのは,民事執行法174 条1項により,その判決の確定時と定められている。[br num=”1″]承諾を命ずる判決は過去の時 点における承諾を命ずることはできないのであり,承諾が効力を生じ契約が成立す るのは判決の確定時である。[br num=”1″]したがって,放送受信規約第4条第1項にいう受信設 備設置の時点での受信契約の成立はありえない。[br num=”1″]受信料債権は定期給付債権である(最高裁平成25年(受)第2024号同26 年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁)が,定期給付債権とし ての受信料債権を生ぜしめる定期金債権としての受信料債権は,受信契約によって 生じ,その発生時点は判決の確定時である。[br num=”1″]受信契約が成立していなければ定期金 債権としての受信料債権は存在せず,支分権としての受信料債権も生じない。した がって,放送受信規約第5条にいう受信設備の設置の月からの受信料支払義務の負 担はありえない。[br num=”1″]② 契約の主体と受信契約の種別の変更 同一の世帯に夫婦と子がいる場合,放送受信規約第2条は,住居が1である限 り,受信設備が複数設置されても受信契約は1とするが,夫婦と子のそれぞれが受 信設備を設置しあるいは廃止すると,判決が承諾を命ずるべき者が誰なのかは,不 明である。それぞれが設置した受信設備の種類が異なる場合,判決が承諾を命ずる 契約の種別が何なのかも,不明である。[br num=”1″]③ 受信設備を廃止した受信設備設置者との関係 承諾を命ずる判決は,過去の時点における承諾を命ずることはできないのである から,現時点で契約締結義務を負っていない者に対して承諾を命ずることはできな い。[br num=”1″]受信契約を締結している受信設備設置者でも,受信設備を廃止してその届出を すれば,届出時点で受信契約は解約となり契約が終了する(放送受信規約第9条) ことと対比すると,既に受信設備を廃止した受信設備設置者が廃止の後の受信料支 払義務を負うことはありえない。[br num=”1″]仮に,既に受信設備を廃止した受信設備設置者に 対して判決が承諾を命ずるとすれば,受信設備の設置の時点からその廃止の時点ま でという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることに なる。[br num=”1″]これは,過去の事実を判決が創作するに等しく,到底,判決がなしうること ではない。[br num=”1″]原告が受信設備設置者に対して承諾を求める訴訟を提起しても,口頭弁論終結の 前に受信設備の廃止がなされると判決によって承諾を命ずることはできず,訴訟は 受信設備の廃止によって無意味となるおそれがある。[br num=”1″]4 財源としての受信料の必要性と放送法64条の関係 放送法の制定当時においても民事訴訟法736条が現行の民事執行法174条と 同様の意思表示を命ずる判決を定めていたのであるから,放送法の制定にあたっ て,同法に定める受信契約の締結義務を,意思表示を命ずる判決によって受信契約 が成立するものとし,それによって受信料を確保するものとする動機付けは存した かもしれないが,そのことと,実際に制定された放送法の定めが,受信契約の締結 を判決により強制しうるものとされているか否かは,別問題である。[br num=”1″]受信契約の内容は放送受信規約によって定められ,その規約による受信契約の条 項は電波監理審議会の諮問を経た総務大臣の認可を経ているのであるから,放送受 信規約は放送法64条1項の趣旨を具体化したものとなっていると解されるが,そ の規約の内容が,判決によって承諾を命ずることができるものにはなっておらず, かえって,任意の契約締結を前提とするものとなっていることは,前項で述べたと おりであり,放送法64条1項は判決により受信契約の承諾を命じうる義務の定め 方をしていないのである。[br num=”1″]5 判決によって成立する受信契約が発生させる受信料債権の範囲 多数意見は,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する理由を,受信 契約の締結を速やかに行った者と遅延した者の間の公平性に求めるが,これは,受 信契約が任意に締結される限り受信料支払義務の始点を受信設備設置の月からとす ることの合理性の理由にはなるものの,放送法の定めが判決が承諾を命じうる要件 を備えたものとなっていることの理由になるものではない。[br num=”1″]契約の成立時を遡及させることができない以上,判決が契約前の時期の受信料の 支払義務を生じさせるとすれば,それは,承諾の意思表示を命ずるのではなく義務 負担を命ずることになる。[br num=”1″]これは,放送法が契約締結の義務を定めたものではある が受信料支払義務を定めたものではないことに矛盾するものである。[br num=”1″]6 受信料債権の消滅時効の起算点 多数意見は,判決により成立した受信契約による受信料債権の消滅時効の起算点 を判決確定による受信契約成立時とし,任意の受信契約の締結に応じず,判決によ り承諾を命じられた者は受信料債権が時効消滅する余地がないものであってもやむ を得ないとする。[br num=”1″]受信設備設置者は,多数意見のいうように,受信契約の締結義務を負いながらそ れを履行していない者であるが,不法行為による損害賠償義務であっても行為時か ら20年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅し,不当利得による返還 義務であっても発生から10年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅す ることと比較すると,およそ消滅時効により消滅することのない債務を負担するべ き理由はない。[br num=”1″]7 放送法の契約締結義務の私法的意味 放送法64条1項の定める受信契約の締結義務が判決により強制できないもので あることは,なんら法的効力を有しないということではない。[br num=”1″]受信契約により生ずる受信料が原告の運営を支える財源であり,これが,原告に ついて定める放送法の趣旨に由来することから契約締結義務が定められているので あるから,受信設備を設置する者に受信契約の締結義務が課せられていることは, 「受信契約を締結せずに受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態が生じな い」ことを原告の利益として法が認めているのであり,この原告の利益は「法律上 保護される利益」(民法709条)ということができる。[br num=”1″]受信契約の締結なく受信 設備を設置することは,この利益を侵害することになり,それに故意過失があれ ば,不法行為が成立し,それによって原告に生ずる損害については,受信設備設置 者に損害賠償責任が認められると解される。 同様に「受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態となること」は,受信設 備設置者にとって,原告の役務による利益であり,受信契約という法律上の原因を 欠くものである。[br num=”1″]それによって原告に及ぼされる損失については,受信設備設置者 の不当利得返還義務が認められると解される。

ちなみに、この判決そのものには意義を申し立てることはできませんがこの判決を下した裁判官を罷免する権利はあります。

それが、定期的に実施される「最高裁裁判官信任投票」です。

 

こちらは大体の場合は衆議院選挙と同時に行われます。

 

ちなみに白紙投函で「信任」です。今回の裁判を不服と思うならば、次の審査で「×」をつけるといいでしょう。

罷免はされないかもしれませんが、大切な意思表示だと思います。

以上、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。